(1)REITと不動産の売却 価値向上の違い
REITのメリットは、不動産の抱えるデメリットの裏返しと言えますが、井出保夫の『入門の金融 REITのしくみ』がまとめているので見てみましょう。
また、不動産仲介業者に売却を依頼するにしても、彼らはそれなりの報酬を提示しなければうごいてくれません。何よりも難しいのは、いつでも高値で売却できるように、物件の価値を向上させるようなマネジメントを続けることです。REITと不動産の保有を比較すると、現金して現金にすることを考えると分かりやすいと思います。不動産は売却するのに時間がかかるうえに、不動産のプロに手数料を支払う必要がありますし、物件の管理や価値の維持だけでも難しいですね。
(2)REITが証券取引所に上場しているメリット
まず、REITは証券取引所に上場することで十分な流動性と換金性を備えています。投資家が買いたいときや売りたいときには、ほぼリアルタイムで売買することができます。REITは上場投資信託ですが、REIT投信とは税金面でメリットがあるうえに、いつでも売却することで現金化することができます。不動産を保有していて現金が必要な場合でも、不動産売却価格を大きく引き下げて売れないことがありますので、REITと大きく違うことが分かりますね。
(3)REITは価格の調査が簡単
価格についても、市場を通して希望価格を指値することが可能ですし、物件の適正価格をいちいち不動産鑑定士に聞かなくても、REITはほぼ毎日市場価格で取引され、しかもその取引相場を新聞の株式欄で知ることができますから、時価を把握するのは容易です。REITは証券市場で取引されているので価格の算定が容易ですが、不動産は価格の算定方法が複数あるうえに時間がかかります。
- REITのメリット 証券市場で価格がいつでも分かる
- 不動産のデメリット 不動産の価格算定に時間がかかり、複数の方法がある
(4)不動産の価値向上が不要
また、物件のバリューアップはプロのマネージャーがすべてやってくれます。投資家は投資パフォーマンスを見ながら、REITの取締役の選任や運用方針の変更、場合によっては資産運用会社の変更等を通じて実現することができます。REITは不動産の管理を委託していますが、不動産を保有している場合、業者の選定や価格交渉を行う必要があります。REIT銘柄と種類を選ぶときに、大手不動産会社がスポンサーとなっていれば、REITが保有する不動産の管理は安全な可能性が高いですね。
(5)不動産のデメリットを金融取引でREITが解消
REITの魅力は、本来流動性に劣る実物不動産の出口戦略として、証券市場での株の売買という金融取引を導入したところにあります。高額な不動産ほど、相対で買い手を探すよりも、中央集約化された市場を通して多くの買い手と取引できるほうが、流動性が高まるのです。REITのメリットは、言い換えると不動産のデメリットとして考えられるものであると思います。REITは不動産市場のデメリットを、証券市場を用いることで解消することで、不動産取引の活発化の役割を果たしていると言えるでしょうね。
REITと株の比較を行うことで、証券市場に上場していても、REITと不動産株で不動産の恩恵が少し異なることが分かります。REITのデメリットとメリットを比較すると、金融商品としての理解が深まり、リスクを意識しやすいかもしれないですね。 スポンサードリンク